fc2ブログ

mixture act28(加筆修正版)

Category : SS-mixture-
一旦引っ込めたact28、とりあえず、なんとか読めるくらいにはしましたので、再upです。
話の大筋は変わりませんが、足りない部分など加筆修正をしています。

少しでもお楽しみいただければ幸いです(^O^)
PCの方は、畳んでいますので、続きよりどうぞ。





「はーっ、食った食った…!」
夕食を終えた大輔が、椅子に深く座り込んで満足そうに腹をさっている。ちなみに隣にいる宏も同じような体勢で寛いでいたりする。
「おい、おめえら! いつまでも寛いでねえで片付けしやがれっ!」
そんなだらけている2人に対して、乱馬は口を尖らせる。
「あたし、手伝うよ」
準備をしている時からずっと「お前は休んでろ」と座らされひとり手持ち無沙汰なあかねは、椅子から腰を浮かせて手伝いを申し出る。
が、
「お前はまだ休んでろ」
と、また一蹴されてしまった。
もう平気なのにと思いつつも、先ほど皆に心配をかけてしまった為、渋々腰を下ろす。
「なあ、んなことより花火やろうぜ、花火!」
寛ぐのにも飽きたのか、怒る乱馬を尻目に大輔と宏は一旦ロッジに戻ると、先ほどの買い出しで買ってきたらしい花火を一式持って出てきた。
「真之介…お前だけだぜ、友達は」
大輔と宏を半眼で睨みながら、乱馬は全てを諦めたようにぼそりと漏らす。
「くぉら、乱馬! オラも片付けしとるだ!」
そこへ、ムースがよく分からない抗議の声を上げた。
「だって、お前友達じゃねーじゃん。俺は構わねえけど、お前が確かそう言ったんじゃなかったか?」
「ぐっ! 確かにそうじゃが…!」
「それとも、何だ? ムース、もしかしてお前、俺と友達になりたいとか? ん?」
「ん、んなワケなかろう!!」
赤面しながら思いきり否定するムースに怒りの捌け口を見つけたのか、乱馬がにやりとした意地の悪い笑みを浮かべて、彼のことをからかい始めた。
あっちもこっちも――……、男の子って結構面白いのね――などと傍観しつつ、あかねはくすくすと笑みを漏らす。
「ねえ、真之介くん。乱馬ってばおかし……真之介くん?」
「…………」
真之介に話しかけようとして――ふと、彼の様子がおかしいことに気づく。片付けの手が止まり、俯いて手元を一点に見つめている。
「真之介、くん…?」
「ん…あ、ああ、何だ? ちょっと考え事をしていて聞いてなかった」
真之介の顔を覗き込んで再度呼んでみると、そこで初めて気が付いたような反応が返ってきた。
「…大丈夫か?」
いつの間にか乱馬も傍に来て、心配そうに真之介をじっと見つめている。
「ああ、大丈夫だ」
「なら、いいんだけどよ」
"大丈夫だ"を繰り返しながらテーブルをまた拭き始める真之介を見やって、乱馬は首を振る。
こちらの問いに対し、真之介が大丈夫と言うならば、あかねも乱馬もそれ以上聞く術を持たない。
「こら! 大輔も宏も乱馬くんたちを見習って片付けをなさい!」
未だマイペースに花火の準備を一足先に進めていた大輔と宏に、とうとうゆかの雷が落ちた。
「ははっ! あいつらめ、ゆかやさゆりからもっと怒られリゃいいんだ」
ゆかの言葉にしぶしぶ花火から手を放し鉄板を解体し始めた大輔たちを愉快そうに眺めながら、乱馬はまた片付けの手を動かし始める。
「あかね、」
とりあえず、そっとしておこうぜ――乱馬は口に出さず、唇の動きたけでそう言うと、キッチンへ行ってしまった。
「……」
真之介のことを気にしつつ、皆の片付けに目を配る。
「ムースくんてば、手際良いのね!」
「オラはシャンプーの店で働いてるだからな!」
さゆりの言葉に得意気なムース。
「シャンプーちゃんすごいね♪」
「女傑族の女、これくらいできて当然ね!それより早く片付けて花火するね!」
ゆかの言葉に、そわそわと花火を急かすシャンプー。
始めはどうなるか不安だったが、意外にも和気あいあいと、穏やかな時間が過ごしている。
大輔と宏以外で手分けして作業していたせいか、片付けは程なく終わりそうだ。
「良かったよ」
乱馬がキッチンから戻ってくると、シャンプーを見ながら嬉しそうにそん微笑んでいる。
「え?」
あかねが疑問符を口にすると、乱馬は笑みを湛えたままこちらに視線を移してきた。
「シャンプーさ。ちゃんとした歳って実は知らねーんだけど、俺らと同年代だろ? 向こうからこっち来て、友達とかいねえからさ――今日、馴染めるかちょっと心配だったんだ」
それが、本当に嬉しそうに見えて。
「乱馬って、シャンプーのこと好きなの?」
思わず、そんなことを尋ねていた。
「は? 何でそうなんの?」
面食らったような乱馬に、あかねは俯く。
「…だって、乱馬ってばシャンプーにすっごい好かれてるし、彼女可愛いし料理だって上手いみたいだし……」
拗ねたように、言葉尻が少だんだんと小さく細くなっていく。
「ったく、お前までんなこと言うのかよ…?」
「だって、」
呆れたような彼の言葉に、次の言葉に詰まる。
「シャンプーのことは、そういう風に見たことねえよ。妹みたいな、んな感じだよ」嘆息しつつ、くしゃくしゃとこちらの髪を撫でながら、乱馬は言った。
「そっか…へへ、」
何故か彼のその言葉に、安心感を覚える。
「あかね、乱馬くん!花火始めるよー!」
そこへ、片づけが終わってすでにデッキから降りていたさゆりから、声がかかる。
「おう! 今行くー!」
乱馬がそれに答え、行くぞとばかり、あかねに向かって手を差し出してくる。
「乱馬、」
「ん?」
「誘ってくれて、ありがとね」
その手をとりつつ、あかねは彼に礼を言う。
「…ああ」
満足そうに屈託のない笑みを浮かべて、乱馬は頷いた。

まだ、一日目。
旅行は始まったばかりだ――


非公開コメント